
人生100年時代、従来のような終身雇用制はもはや過去のものとなりつつある今。さらにコロナ禍による経済不安は未だ終わりが見えず、中小企業はもちろん大企業ですら雇用を維持できない状況となっています。
そんな社会の中で生き残るために自分の身は自分で守る=自分のキャリアは自分で築くことが当たり前の社会になろうとしています。そのために必要なのが「学び直し」です。
「学び直し」とは、
義務教育および高校、大学、専門学校などで教育を受けた後、社会人となった方々が自発的に新たなキャリアやスキルアップのために、勉強をし直すこと。
今回は、会社員の男女610名にアンケートを実施。「学び直し経験の有無」や「経験者が学び直しによって得たこと」、また「今後の学び直し意向」などを調査しました。
(調査期間:2021/5/24~2021/5/31 対象:25~59歳の男女会社員610名)
「学び直し」に関するアンケート調査実施!会社員610名が回答
社会人になってからの「学び直し」経験を伺いました。
学び直し経験者は53.1%

およそ53%の方は、何らかの「学び直し経験がある」と回答しています。
若い世代ほど学び直し経験者が多い
学び直し経験について、年齢別で見ていきましょう。

「特に何もしていない」という方々の割合を年代別に見てみると45~49歳が最も多く、20代~30代前半の方々は比較的学び直しの経験値が高いようです。若い世代の方々は就職をして自分の知識やスキルが足りないことを実感しての学び直しでしょうか。もしくは、スキルアップやキャリアアップへの意識が高いということかもしれません。
30代後半から40代にかけての年代は、お子さんがいるご家庭であれば、子育てに時間もお金もかかる頃。自分の学びまで気もお金も回らないといった理由もあるかもしれません。
学び直ししたことに多いのは、語学系・パソコンスキル
学び直し経験のある方々に、どのようなジャンルの内容に取り組んだのかを伺いました。

学び直ししたことで一番多かったのが「語学系」、ついで「パソコンスキル」。「介護・福祉・医療関連」「システム・プログラミング関連」「ビジネス・経営・マネジメント関連」が同程度の割合となっています。
具体的に学んだことは以下の通りです。
語学 | 英語・英会話・TOEIC、ビジネス英語、韓国語、中国語、イタリア語、 スペイン語 |
介護・福祉・医療関連 | ヘルパー、実務者研修、リハビリ、看護、救命救急、医療事務、介護事務、 登録販売者、調剤薬局事務 |
パソコンスキル | MOS、仕事につかえるパソコンスキル |
システム・プログラミング | プログラミング言語、ネットワーク技術、基本情報処理、ネットワーク構築 |
ビジネス、経営、マネジメント | 社内におけるコミュニケーション力、マナー接遇、営業ノウハウ、経営関連 |
会計・経理 | 簿記、資産形成、資産運用、会計知識、財務諸表の基礎、 ファイナンシャルプランナー |
司法・労務 | 労務、社会保険労務士、行政書士 |
不動産 | 宅地建物取引士 |
Webデザイナー・クリエイター | Webデザイン |
健康・美容 | 化粧品検定、アロマ検定、マッサージ、健康知識 |
趣味・教養・スポーツ関連 | 漢字検定、防災、整理収納アドバイザー、手話 |
その他 | 宝石鑑定、心理カウンセラー、メンタルヘルス、セラピスト、 危険物取扱主任者、キャリアコンサルタント、化学、物理 |
学び直しをしたジャンルで一番多かった「語学」。具体的に学んだ内容を伺ったところ、その大半が「英語・英会話」という回答でした。
その理由としては、以下の2点が考えられます。グローバル化社会の中、仕事でもプライベートでも海外の方と接することができる機会が増え、「英語で日常会話くらいできれば」と思うことも少なくないこと。また、義務教育で学んだ経験もあることから「英語・英会話」の学び直しは比較的ハードルが低く感じるということがあるのかもしれません。
次いで多かったのが「パソコンスキル」です。パソコンは社会人であれば避けては通れない必須スキル。
パソコンスキルが向上すれば、業務効率も格段にあがり、そのことが周囲からの評価アップにもつながります。
また転職を考えている方であれば、ワードやエクセルのスキルレベルを証明する資格=MOS(マイクロソフトオフィススペシャリスト)を取得すれば、転職活動においても強みになると言えるでしょう。
学び直しによって得られたこと、資格取得46.9%、転職15.1%、収入アップ14.8%
学び直し経験のある方々に、学び直しによって「得られたこと」を伺いました。

「資格を取得できた」という方が46.9%、ついで「自分の知識や経験に自信を持てるようになった」という方が34.3%でした。
学び直しによって自分が培ってきた経験や知識の裏付けができ「自信が持てるようになった」、さらにそれが「資格」という形で証明できるようになった方もいらっしゃるでしょう。
そして、その資格があったおかげで「転職・再就職できた」「収入がアップした」というポジティブな連鎖が起きている方も多いのではないでしょうか。
「学び直し」をしていない理由は、時間とお金
学び直し経験のない方に、その理由を伺いました。

さらに年齢別に見てみましょう。

ほとんどの世代でも大きな割合を占めているのが「時間がない」、ついで「金銭的に難しい」という回答です。
「時間がない」という理由については、学び直ししたいと思えることがあれば、他のことにかけている時間を学びに使おうと意識も変わることが想定でき、いざとなれば自分自身の気持ちひとつで解決可能かもしれません。
しかしながら、「金銭的に難しい」という理由は、意識の変化や努力では解決の難しい事柄かもしれません。
平均賃金が上がらない社会、さらに追い打ちをかけるようなコロナ不況によって、安定した収入を得られていないという方々も少なくない状況下。生活費や子どもの教育費で目一杯になり、自分の学び直しにまでお金をかけられないということも考えられるでしょう。
そして、金銭的な理由よりも「メリットを感じない」「勉強が好きではない」が上回っているのが55歳~59歳です。この年代になると「学ぶ」という経験から長い期間離れているために、勉強することへの拒否反応であったり、現状に満足しており必要性を感じていなかったりということがあるのかもしれません。
上記の結果からひとつ付け加えるとするならば、「学び直し」がまだ定着していない社会において、「学び直しをしていない理由」を考える以前に、「学び直しを意識したことがない」という方も多いように感じます。さらに、時間やお金に余裕がなければなおさらということではないでしょうか。
これからの自分にとって「学び直しは必要」「学び直ししたい」は、6割を超える
学び直し経験の有無に限らず、回答者610名に今後の学び直し意向を伺いました。

「これからの自分にとって学び直しは必要か」という質問に対して64.2%、「学び直ししたいか」という質問に対しては61.0%が「とてもそう思う/ややそう思う」と回答しています。
さらに年齢別に見てみましょう。
【学び直しが必要だと思いますか】

【学び直ししたいと思いますか】

「学び直ししない理由」として、「メリットを感じない」「勉強が好きではない」と回答した方の割合が多かった55~59歳では、上記いずれの質問についても「とてもそう思う」「ややそう思う」の割合が低くなっています。
では、この質問を学び直し経験者と未経験者で比較してみましょう。


やはり、経験者は未経験者よりもそれぞれについて「とてもそう思う/ややそう思う」という方の占める割合が多く、「学び直し」に対してポジティブな印象を持っていることがわかります。自らの学び直し経験に何らかの手応えやメリットを感じているということなのでしょう。
そして、未経験者に関しても「どちらともいえない」を含めると、7割以上となり経験者に迫る割合になります。このことから、未経験者でそれほど意欲的ではない方も、きっかけさえあれば学び直しへの一歩を踏み出せる可能性はあると言えるでしょう。
その一歩のためには、学び直しのメリットや必要性を明確に感じられるような情報、利用しやすく金銭面でも十分な支援制度が必要です。
そして、それらの情報が必要な方々に十分に届き、我が事として捉えられるようにすること。
充実した制度と環境の整備、この両輪がしっかりと整ってはじめて「学び直し」が社会に根付くのではないでしょうか。
この記事を執筆したのは、学ぶ働く研究所所員:佐藤葉子
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