専業主婦514名に仕事復帰に関する意識調査~不安やネックとなるものは?~

専業主婦の社会復帰
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「あなたは仕事復帰(社会復帰)したいと思いますか?」

夫婦共働き世帯が全世帯数の8割に近づこうとしている今、専業主婦の方々は仕事復帰について、どのような意向を持っているのか。そして、仕事復帰を希望する方にとってネックとなるものは何かについて調査しました。また、仕事復帰を希望しない方々には、その理由について伺いました。

今回は、この調査結果について立教大学経済学部で労使関係論、女性労働論を研究されている首藤若菜教授に分析を依頼。調査結果とともに教授の見解を紹介していきます。

回答者:20代〜50代の主婦の方514名
回答期間:2020年7月20日〜7月27日 (Fastaskにて実施)

仕事復帰を希望する方は52.7%

まずは今回のアンケート回答者の属性から見ていきましょう。

【アンケート回答者の属性】

首藤教授:本アンケートの専業主婦は、必ずしも世代や子供の有無に特徴をもつわけではない(図①)。例えば、子供無しの専業主婦は、若年層(25-29歳)と中高年層(40-44歳)で割合が相対的に高く、それぞれ37.5%と33.7%を占める。逆に35-39歳・50-54歳層では、子供無し専業主婦の割合が低く、それぞれ16.0%、15.9%にとどまる。

回答者514名に聞きました「あなたは仕事復帰(社会復帰)したいと思いますか」。

首藤教授:仕事の復帰を希望する方は、全体の52.7%と約半数である。この数値を多いとみるか少ないとみるかは難しいところだが、政府統計である『労働力調査』(総務省、2019年)によれば、現代では30-40代の女性の約8割が就業しており、非労働力人口(就業しておらず、就職活動もしていない層)のなかで、就業を希望している者の比率は25-34歳層で41.1%、35-44歳層で34.7%である。政府統計との比較からは、本アンケートの回答者では、就労希望者が多い傾向がみられる。

年齢が若いほど復帰希望者の割合が高い

首藤教授:仕事復帰の有無を年齢別にみると、年齢が若いほど復帰希望者の割合が高く、年齢が上がるほど復帰希望者の割合が下がる傾向がある(図②)。ただし、40-44歳層のみは復帰希望者の割合が高い。これは子育てが一段落した(子どもが小学校に上がった段階など)後に復帰を検討する傾向(図③)があらわれているものと考えられる。

グラフ2

子どもの有無と復帰希望の関係は?

首藤教授:他方で子どもの有無は、必ずしも復帰希望を規定する要因ではない。本アンケートの回答者のうち子ども有りの主婦は73.0%であるが、「子ども有りで復帰希望有り・無しの比率は、55.6%:44.4%」であり、「子ども無しの復帰希望の有り・無し比率は、51.1%:48.9%」である(不明者を除く、図④)。つまり、子どもがいるから復帰をとどまる、もしくは、子どもがいないから復帰を望むというわけではない。

「子育てがひと段落したら…」という発想は薄れる傾向に

首藤教授:子どもの年齢(第1子の年齢を参考値とする)と仕事復帰を希望する人数を見ると、復帰を希望する方のうち、育児がひと段落したと思われる小学校低学年での復帰希望者が若干高めに出るものの、1-2歳児を抱えていても復帰を希望している方が一定数存在することがわかる(図③)。つまり、復帰を希望する方は、子供の年齢に関わらず復帰を希望しており、一般的に言われる「子育てひと段落したら…」という発想は薄れていることが考えられる。ただし、そうであるならば、早期での復帰を希望する方が、そもそもなぜ離職をしたのか(せざるをえなかったのか)その理由が気にかかるところである。

仕事復帰を希望しないのは「専業主婦でいたい」から

回答者の44.2%「仕事復帰を希望しない」という方々に、その理由を伺いました。

年齢を重ねるほど増える「専業主婦でいたい」

首藤教授:仕事復帰を希望しない理由は、第一が「専業主婦でいたい」(58.0%)である。「専業主婦でいたい」から専業主婦でいるのであれば、確かに子どもの有無に仕事復帰するかどうかが左右されるわけではないだろう。
復帰を希望しない方の年齢構成は、40代後半(26.7%)が最も多く、次いで30代後半(23.3%)、30代前半(18.0%)となっている(図⑤)。年齢別に仕事復帰を希望しない理由をみると、若い層ほど「家事や育児に専念したい」が多く、年齢を重ねるほど「専業主婦でいたい」が増える。子どもの年齢別にみても、子どもが小さいほど「家事や子育てに専念したい」層が多く、子どもが高校生以上になると「家事や子育てに専念したい」という回答がぐっと減少する(図⑥)。つまり中学生までは、家事や子育てに手がかかると考えられているようである。

グラフ5

夫の希望というより、専業主婦でいるのは自分の意志

首藤教授:要するに、若年層では子どもが小さいうちは仕事から離れて家事・育児に専念しようと考えている方が多く、中高年層(40-50代)では「専業主婦でいたい」ために専業主婦でいる方が相対的に多い。「専業主婦でいたい」という希望は、子どもの有無にかかわらず多い傾向があり(図⑦)、夫の希望というよりは本人の気持ちとしてそうした思いを抱いていることがわかる。

仕事復帰を希望する理由は「お金のため」

仕事復帰を希望する方に「仕事復帰したい理由」「どのような就業形態で働きたい」「仕事を選ぶ上で最も優先する条件」について伺いました。

首藤教授:最大の理由は「生活費・教育費のため」(80.1%)であり、次いで「生活をより豊かにするため」(53.5%)が続く。「自己実現、自分のやりがいのため」(26.2%)や「自分の世界(視野)、社会との関わりを広げたい」(25.5%)などの理由よりは、「老後の備えのため」(43.5%)も含め経済的動機が大きい

仕事復帰に際して一番の問題は「働く時間」

首藤教授:「勤務時間の融通が利く(時短勤務・フレックスなど)」と「休みがとりやすい(家庭や子どもの用事など)」に回答が集中しており、専業主婦の女性が仕事復帰するうえでは、働く時間(休日・休暇を含む)が最大の問題であることがわかる。

フリーランス志望者は「自己実現・やりがい」を求めた仕事復帰

首藤教授:雇用形態別に希望する就労希望理由を見ると(図⑧)、いずれも「生活費・教育費のため」が多いものの、パート・アルバイトで「生活費・教育費」をあげる人が最も多く、フリーランス・自営・在宅ワーカーで最も少ない。フリーランス等では「生活費・教育費のため」と同程度に「自己実現、自分のやりがいのため」をあげる人が多い。つまり、パート・アルバイトでは、就労を生計維持の手段と捉える向きが強く、フリーランス等では、就労を能力向上や能力発揮として捉える向きがある。

図⑧希望する雇用形態別にみた仕事復帰の理由

希望雇用形態と仕事復帰時の優先事項はリンクしている

首藤教授:雇用形態別に優先事項(第1位)にあげたものをみると(図⑨)、いずれも「勤務時間」と「休み」が最優先の事項であるが、そのなかでも正社員では「勤務時間」の割合が相対的に少なく、「給料が高水準」「通勤が便利」の割合が相対的に高い。逆にパートでは「給料水準」の割合が低く、「勤務時間」と「休み」が高いことから、パートの方が賃金よりも時間を優先していることがわかる。フリーランス等では「仕事内容」を優先する割合が高く、特定のスキルや知識があるゆえにフリーランス等を希望している人が多いことが伺える。これは前述の就労理由に「自己実現」が多いことと合致している。派遣・契約社員は、今回は選択した人数が少ないため、バイアスがかかっている可能性があるものの、「残業が少ない」ことをあげる人が多く、定時に帰れることに魅力を感じ派遣・契約社員を選択しようとしている。

図⑨雇用形態別にみた優先事項

首藤教授:ただし優先条件は、年齢によっても傾向が分かれる。年齢別に優先条件(第1位)を見ると(図⑩)、最も「勤務時間」「休み」を選好するのは35-39歳層であり、ここでは8割がそう答えている。対して、45-49歳層では、「通勤が便利」を、50-54歳層では「仕事内容」を優先事項にあげる。いわゆる子育て世代で時間への懸念が強く、中高年期では場所や仕事内容を気にしている。

図⑩年齢別にみた優先事項

希望職種第1位は「オフィスワーク」

首藤教授:望む雇用形態別に就労希望業種(職種内容)を見ていくと(図⑪)、いずれも「オフィスワーク」が最も多いが、それ以外の業種では、パート・アルバイトは「小売・販売」「フード・飲食」の比率が特に高い。正社員を希望する方は「オフィスワーク」に希望が集中しているが、次いで「医療・看護」が多い。フリーランス等は、「クリエイティブ・エンジニア」を希望する割合が、他の雇用形態と比べて突出して高い傾向にある。

図⑪希望業種ごとにみた希望の雇用形態

「勤務時間・休みのとりやすさ」を重要視、子育て世代ではとりわけ顕著な傾向に

首藤教授:以上をまとめると、専業主婦から仕事復帰を考える際、仕事選びは「勤務時間の融通」「休みの取りやすさ」が最も重要な要素となる。特にそれに重点を置くのは30代で、子育てとの両立のためだと思われる。その傾向が強い方ほど、飲食店やスーパーなどでパート・アルバイトといった雇用形態で働くことを考えている。他方では、より「給与水準」を重視する傾向のある人はオフィスワークで正社員を希望する傾向がある。「仕事内容」にこだわりがあり「自己実現」のために仕事復帰を考えている人は、フリーランス等で「クリエイティブ・エンジニア」などの職種で働こうと考えているようである。

仕事復帰のネックとなるのは「家事・子育てとの両立」

専業主婦の仕事復帰には、不安がつきもの。よく言われる「ブランク」や「主婦業との両立」など、ネックとなるものは何か、さらにはそれを解消するために何が必要かを聞いてみました。

首藤教授:最終職歴(退職時)からのブランクごとに仕事復帰の際の不安を見ると、ブランクが15年までは、抱く不安感はほぼ共通している(図⑫)。最大が「家事との両立」、ほぼ同比率で「子育てとの両立」、次いで「希望条件にあった仕事が見つかるか」である。ブランク15年以上では「自分の知識やスキルに自信がない」の割合が高まる。ブランクの長さは、不安のあり様にさほど関係していないようにみえる。

首藤教授:ブランク別に復帰で希望している業種を見ると、「医療・介護」、「理美容・リラクゼーション」では、ブランク3年未満の方が半数を占める(図⑬)。両職種でブランク年数が短い傾向にある理由は、はっきりとしないものの、仮説としては有資格者や経験者が、技能の劣化を嫌い短期間で復帰しようとしていると指摘できる。 同様に専門職と思われる「クリエイティブ・エンジニア」では、ブランク年数が長い方も相対的に多く含む。ブランク年数が長くても、在宅で勉強して資格等を取得して仕事復帰することを考えているのかもしれない。

図⑬ブランク年数と希望業種

不安やネック解消には「家族の理解と協力」が何よりも必要

働く主婦に対して理解ある職場が増えることが必須

首藤教授:家事や子育てに関することは「家族の理解と協力」が突出して多いものの、次いで「職場の理解と協力」が多く、「職場の理解と協力」は、前述したどの不安要素においても高い。つまり、専業主婦たちは、家庭内の調整だけでは仕事復帰に踏み切ることが難しいと考えおり、それを後押しするには理解ある職場が増えることが必須条件となる(図⑭)。

今回のアンケートを総括して~首藤教授より~

仕事復帰希望者が安心して復帰できる社会&企業サポートの確立を

一般的に、女性は子育てに専念するために離職し、子育てがひと段落したころに復職すると認識されている。しかし本アンケート結果からは、子どもの有無や子どもの年齢は、必ずしも仕事復帰を左右しているようには思われなかった。むしろ幼い子を抱えながらも、仕事復帰を検討している人も少なくない。仕事復帰を希望する人々が安心して復帰できるよう、家事・育児と仕事を両立するための「社会的および企業内のサポート」の確立が問われていることを強く感じた。
仕事復帰を考えた時、特に勤務時間、休暇に関する懸念が強い。ゆえに多くの人が、小売業でのパートを選ぶ傾向がある。しかしより幅広い職場、雇用形態でそれらの不安を解消する取り組みを進め、復帰を検討する女性たちが選択しうる職業や雇用形態が増えていくことが重要である。

他方では、仕事復帰を希望しない人々が「子育て」や「家事」を理由とするだけでなく、「専業主婦でいたい」という希望を抱いていることも示された。そもそも女性の就業行動は、夫の所得に影響され、妻の就業率は夫の所得が上がるほどに下がる傾向がある(これを「ダグラス・有沢の法則」と呼ぶ)。年々この傾向は弱まってきていると報告されているものの、日本では、いまだにその傾向が確認される(図⑮ 出典:総務省『労働力調査(詳細集計)』2019年)。

図⑮夫の所得階級別にみた妻の就業率

ただ、近年では夫の所得階級が低いなかでも専業主婦を選択する「貧困専業主婦」が存在しており、専業主婦の二極化が進行していることも指摘される。専業主婦という選択は「男性は外で働き、女性は家庭を守る」というジェンダー規範に沿った行動でもある。ジェンダー意識は、日本のみならず海外においても学歴が上がるほど弱まる傾向があり、その結果、低学歴層カップルでの専業主婦率の高まりが、貧困専業主婦を生み出す一要因となっている。

仕事に復帰するかどうか、専業主婦でいるかどうかは、むろん個人の自由だ。自由な選択の結果であれば、何ら問題はない。ただ学歴の高低でジェンダー意識が規定され、それによって、実質的に選択の幅が狭まっている可能性も否めない。

首藤若菜教授(しゅとう・わかな)
<プロフィール>
立教大学経済学部教授。労使関係論、女性労働論専攻。日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。主著に『物流危機は終わらない:暮らしを支える労働のゆくえ』(岩波新著2018 年)、『グローバル化のなかの労使関係:自動車産業の国際的再編への戦略』(ミネルヴァ書房2017 年)、『統合される男女の職場』(勁草書房2003 年)など。

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