主婦520名に聞きました!コロナにより収入が減った世帯46%

世帯所得
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家計を預かる主婦の方にアンケート!「今回のコロナウイルス拡大の影響で世帯収入に変化はありましたか?」、「収入を増やすために何か行動しましたか?」。

立教大学経済学部教授で労使関係論、女性労働論を専攻されている首藤若菜教授よると「 世帯所得の向上は妻の就労状況にかかっている」とも。アンケート結果から専門家はどのような分析をしたのでしょうか。

回答者:20代〜60代の主婦の方520名
回答期間:2020年5月2日〜5月13日 (モニプラにて実施)

15-64歳の女性の69.6%が就業している今日

専業・兼業問わず主婦を対象に行った今回のアンケート。集計の結果、 専業主婦が45%、兼業主婦(フルタイム、パート+アルバイト)が47%と、ほぼ同割合となりました。
年齢は次の通り。30代-42%、40代-22%、25~29歳-19%、次いで50代、60代となっています。

首藤教授:日本では、女性の就業率が2010年ごろから急速に上昇しており、今日、生産年齢人口である15-64歳でみると69.6%が就業している。25-44歳に限ってみれば、就業率は76.5%に達する(総務省『労働力調査』2018年より)。すなわち、本アンケートの回答者は、平均的な女性の就業状況よりも専業主婦割合が高いことを特徴としている。

妻がフルタイムで働くことが世帯年収を大幅に上昇させる

回答者に「おおよその世帯年収」を伺いました。

首藤教授:回答者の世帯年収は、300万円未満、300万円代、400万円代、500万円代がそれぞれ14-16%ずつ存在している。世帯年収と回答者属性をかけあわせたものが図①である。専業主婦世帯の割合が、どの年収世帯でも最も高いものの、年収が最も低い層(300万円未満)では、「兼業主婦(パートタイマー・アルバイト)」が36.9%と「専業主婦」(38.1%)と同程度存在しており、年収が最も高い層(900万円以上)では、「兼業主婦(フルタイム)」が36.2%と最も高い比率を示している。妻がフルタイムで働くことが世帯年収を大幅に上昇させることは、すでに多くの研究で実証されている。本アンケート結果においても、妻の就労が世帯年収を引き上げている可能性がある。

年齢とともに年収があがるとも言い切れない

首藤教授:図②は、世帯年収別の年齢階級比率である。所得階級が下がるほど若年層(20代)の割合が増え、高まるほど高年層(50代)が増える傾向にあるものの、すべての所得階級で約2割は40代が、約1割は50代が占めている。すなわち、若いうちは低所得であるが、年齢を重ねれば高所得になるとは言い切れず、中高年になっても年収が上昇しない層が少なくない割合で存在していることが分かる。

経済活動の縮小が続けば、景気悪化の影響から逃れることは難しい

回答者に「新型コロナウイルスによる収入の変化」について伺いました。

非正規雇用者は解雇リスク高、平均所得低

首藤教授:新型コロナウイルスのような大きな経済的ショックの影響は、経済的弱者により強くあらわれる。例えば、正規雇用者よりも非正規雇用者の方が、解雇リスクが高く、平均所得が低い。加えて社会保険でカバーされる程度も前者よりも後者の方が小さい(例えば、非正規雇用者は、失業中の生活を支える雇用保険に加入していない場合も少なくない)。

世帯年収300万円未満の6割が収入減

首藤教授:今回のアンケート結果からも、こうした事実が示されている。「今回のコロナウイルスの拡大の影響で世帯収入に変化はありましたか」という問いに対して「収入が減った」という回答は、全体の46%とすでに高い比率を示しているが、「世帯収入」別にみると300万円未満では6割を超えている(図③)。「収入が減った」と回答する割合は、所得が高くなるにつれて下がることが示されており、逆に、「変化なし。今後自粛が続いても変化がない」と考えている世帯は、所得が上がるにつれて比率が上昇する。今後も変化がないと考えている層は、900万円以上世帯では4割に達する。

首藤教授:収入が減少すれば、貯蓄を切り崩さざるをえない場合もある。しかし、貯蓄額も所得に比例するため(図④)、所得水準が低い世帯は、解雇、一時帰休、賃金低下などにより生活が困窮しやすい。
ただし、現状では「変化なし」であっても「今後自粛が続くと変化がでる可能性がある」と、将来に不安を持っている人は、すべての所得階級で高く、「収入が減った」と合わせると、どの所得階級でも7割~8割に達する(900万円以上の世帯のみ6割にとどまる)。

幅広い層で経済・雇用に対する不安感が広がっている

首藤教授: コロナショックの影響は、現状では産業や職業によって異なると指摘されている。テレワークが対応可能な産業や職業では、影響が比較的小さい。他にもいわゆる「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる社会活動の維持に不可欠な産業(医療、小売業、物流など)では事業を継続しやすい。ただしこれら業界であっても、経済活動の縮小が続けば、景気悪化の影響から逃れることは難しい。それゆえ、新型コロナウイルスが経済、雇用に与える影響に対する不安感は幅広い所得階級に広がっている。

資格取得は「人的投資」 、回収見込み額によって投資額は異なる

「今後の収入や仕事を増やすために何かしようと考えましたか」 「具体的に何をしましたか」という設問の回答は以下の通りです。

今スキルアップや資格取得にかけられる金額はどれぐらいですか?」という問いについては、次のような結果となりました。

首藤教授:スキルアップや資格取得にかけられる金額は、いずれの所得階級でも「3万円未満」との回答が最も多い(図⑤)。ただ、世帯年収が300万円未満では8割以上が3万円未満と回答するのに対して、900万円以上では34.8%とその差は大きい。収入が減少した、もしくは今後減少するかもしれない、という時に資格取得に費用をかけることは、どのような世帯でも厳しい。貯蓄額の差が、スキル・資格にかける費用の差に反映している可能性もある。
所得水準の高い方が、資格取得に投じられる費用も大きい傾向にあるが、いずれの所得階級でも大半は5万円以下を想定しており、世帯年収による差は小さいことにも留意が必要である。
そもそも経済学的に考えれば、資格取得という行為は人的投資の一つである。すなわち、投資の結果、回収しうる額に応じて、投資額は異なる。スキルアップや資格取得のためにかけられる金額が大きいということは、それだけ回収の見込みがあるスキルや資格、すなわち、取得後には高賃金が見込めるスキルや資格を想定していると捉えるのが合理的である。そう考えると、そもそも目標とする資格の種類が異なることが、この回答の差としてあらわれている可能性もある。

ちなみに「今から資格取得するなら何系の資格を目指しますか?」という設問については、以下のような回答が得られました。

今回のアンケートを総括して・・・

首藤教授:新型コロナウイルスは、私たちの暮らし、生活、経済活動に深刻な影響を及ぼしているが、その打撃の大きさは、世帯の年収水準によって明らかに異なる。
現時点でも様々な影響が出ているものの、とくに雇用・労働に対する影響はこれからが正念場である。雇用は、通常、経済の変動を受けてから変動が起きるのであり、経済と雇用との関係には、若干のタイムラグが発生することが分かっている。言い換えると、経済の落ち込みの半年~1年後に、雇用の落ち込みが訪れることが多い。現在は、雇用調整助成金などを用いてどうにか持ちこたえている雇用も、今後、急速に悪化していく可能性も否めない。
世帯所得の向上を図ろうとする場合、最も手っ取り早い方法が、妻の就労状況を見直すことである。専業主婦の妻がパートやアルバイトで働く、パートやアルバイトで働いている妻がフルタイムで働く。世帯のなかで働く者の数が増え、働く時間が増えれば、その分所得は増加するためである。
むろん家庭内の性別役割分業が根強い日本では、とくに子どもを持つ女性の就労は容易でないことも確かである。だが政府は、それを支えるために環境整備に取り組んできたし、現実に女性の就業率は年々上昇を続けている。
仕事とは、重要な稼得手段であるが、それだけでなく、社会とのつながりを増やし、社会に参加するきっかけとなりうる。もちろん、どんな仕事でもいいわけでもない。自身が望む働き方や職務内容を獲得するために、スキルアップや資格取得に取り組み始めることは、昨今の在宅時間を有効に使う一つの方法となろう。

首藤若菜教授(しゅとう・わかな)
<プロフィール>
立教大学経済学部教授。労使関係論、女性労働論専攻。日本女子大学大学院人間生活学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。主著に『物流危機は終わらない:暮らしを支える労働のゆくえ』(岩波新著2018 年)、『グローバル化のなかの労使関係:自動車産業の国際的再編への戦略』(ミネルヴァ書房2017 年)、『統合される男女の職場』(勁草書房2003 年)など。

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